5. ランの分類 どんな系統があるの?
東洋ランと洋ラン
ランは洋ランや東洋ランの2分野に分けられます。なんとなく「分類」というより「分野」といった方がしっくりときます。この2分野は性質や形態など植物的な違いというより、原産地や園芸的な扱いの違いによるところが大きいです。例えば、シュンランとカンランは東洋ランでは別々のものとして扱われますが、洋ランではひっくるめてシンビジウムの仲間として扱われる、といった風にです。 また、それぞれを比較すると文化的な違いのようなものも見られます。
洋ラン
洋ランは「西洋ラン」の意で熱帯・亜熱帯原産の種が多くを占め、日本にはヨーロッパ経由で入ってきました。「西洋生まれのラン」と言うよりも「西洋から来たラン」と言うことでしょう。
シンビジウム |
鑑賞対象は主に花で、花の美しさや派手さ、珍奇さを愛でます。様々な種を掛け合わせて自然界にはないものを作り出す「交配」が盛んで、種類が多くバラエティーは非常に富んでいます。
東洋ラン
洋ランと区別するために日本、中国原産のものを東洋ランと呼びます。こちらは「東洋生まれのラン」と言う意味合いになります。東洋ランはサギソウやエビネのように山野草として楽しむものから、独自の園芸分野を築くのものあります。
専門性の高いものは栽培の歴史が古く、古典園芸(‡1)とも言われます。花だけではなく、葉や茎の姿形、株全体の様子、植えられた鉢とのバランスなどすべてを鑑賞の対象とします。それぞれに観賞用の専門鉢(化粧鉢)があり、植え方や用土に決まりがあります。なんとなく「道」や「作法」と言う言葉がぴったりときます。
‡1 東洋ランの中の古典園芸
長生蘭(ちょうせいらん:セッコク)、富貴蘭(ふうきらん:フウラン)、小町蘭
(こまちらん:ネジバナ)などが知られています。
■名前の正体は?
カトレア、オンシジウム、シンビジウム等々…普段私たちが呼んでいるランの名前は属名に当たります。細かくいえば属名を学名で呼んでいます(属名には和名もあります)。 東洋ランのように和名が普及しているものもありますが、洋ランはたいがいは属名呼称です。
ラン科はおよそ700属にまとめられており、その下にさらにたくさんの種が分類されています。近縁属同士が統合されたり、新たに属が設けられたり、種が他の属に移動になったりと、些細なものも含めると毎年のように変更が行われています。それによって呼び名(属名)が変わることもあります。
原種と交配種、属間交配種
人の手で改良されていない、野生のままの種のことを原種と言います。ランの原種は野趣や独特の美しさがあり、その魅力にはまって「原種好き」になる人も少なくありません。趣味の世界です。
一方、人の手で違う種同士を掛け合わせてできた種を交配種と言います。原種にはない花色や美しさを作り出したり、性質を改良する目的で交配は行われます。例えば、花が大きくて美しいが暑さに弱い種に花は地味だが耐暑性のある種を掛け合わせ、花が美しく暑さに強い種を作り出すという感じです。
カトレア属の中のAとBと言う種を掛け合わせた場合は単に交配とか種間交配と言います。カトレア属と他の属を掛け合わせるような、属同士の交配を属間交配といいます。属をまたぐような交配は成功しないことが多いのですが、ラン科植物は近縁属同士で実を結ぶことが多々あります。属間交配で新たにできた属を人工属と言います。2つの属を掛け合わせたものから始まり、3属間交配、4属間交配などいくつも交配を重ねてできた人工属もあります。